1.財務諸表のおさらい
2.資金繰り改善項目
3.M&Aという発想
資金繰りで日々苦しんでいる方、
すでに崖っぷちに立たされている方
に向けてお話しします。
本題の前に会社の経営状態を表す以下3つの財務諸表のおさらいからです。
一定時点における会社の財産状態を表します。
流動資産:現預金、売掛金、棚卸資産等の1年以内に現金化できる予定のお金
流動負債:手形、買掛金、未払金など1年以内に支払わなくてはいけないお金
重要なのは流動資産を流動負債で割り返した「流動比率」です。
これが150%以上あれば安全と言われていますが……
もし売掛金のなかに回収予定の立たないもの(不良債権)や、流動負債に含まれない多額な長期借入金があったりしたら、この指標もかなりあてにならないものとなります。
赤字を続けるとその累積が資本の金額を上回り、結果、純資産(自己資本)がマイナスとなり債務超過が発生します。当然、仮に資産をすべて売却しても、負債を返済しきれない状態です。対処法は限られてきます。
その期間における収益の状況を表します。
ポイントは収益・費用を、現金の入金・出金によらず発生を意味する経済的事実があった段階で計上していることです(発生主義)。つまり実際にお金が入った、払ったではなく、役務を提供した時、納品時などに計上していることです。
その他重要な指標として粗利益率、人件比率、変動費・固定費の分類などが上げられます。
その期間中に現預金「つまり実際のお金」がどれだけ増減したかを表します。 同期間の損益が黒字だったのに実際は「お金が大幅に減っていた!」。この原因には損益計算書の計上基準が発生ベースになっていること、また損益には見えない借入の返済、売掛金の回収遅滞など多くが原因しているわけです。
つまりこのキャッシュフロー計算書をベースに月々の収支計画をたてる必要があるわけです。
さて資金繰り改善ですが、結論からいって速攻性のある特効薬はありません。でも心配なさらないで下さい。今からお話しする項目をまずは試みて下さい。
その前に、社長は相当の覚悟でこれに臨んで下さい。
また、社長が会社の状況を全体会議で説明し社員の理解を得て下さい。
まず自社の財政事情が現状どうなっているのかを客観的に見つめて下さい。
自転車操業で毎月なんとか回しているのか、完全に八方ふさがり万歳寸前なのか、状況を把握したら以下の手順で進めて下さい。重傷の度合いによって話しを進めていきます。
まず回収サイトを全社的に統一します。不良についてはランク付けして容易と思われるものから順次徹底回収に入ってください。難しそうなところへは督促・内容証明を送り続けて下さい。仕入についても従来からの方法にとらわれない視点でルール化し、不良在庫ではき出せるものは順次処理してください。
- 外注→これまでのしがらみを捨ててWEB、紹介などで安く・信頼のおける業者を探す
- 電話・携帯→正規取扱店に行って過去のデータをもとに最も安いプランに変更しましょう。
私用通話がないか明細を見ましょう。(あったら当然注意です。細かいことのようですが社内体質の甘い会社ほど目に見えないロスがたまっていく傾向にあります) - 保険→福利厚生目的の労災の上乗せの損保は全て解約、社用車は複数台なら1社にまとめて割引適用、役員退職金・相続目的の保険も解約か相続を勘案して検討
- 会費→経営に最低限必要なもの以外は脱会
- 社用車→不要なものは売却
- 警備会社・玄関マット・ウォータボトル・置き薬・ユーセン→すべて解約
- 冷暖房→夏季・冬季の温度設定を大きく張り紙する
- 通勤手当→3ヶ月、できれば6ヶ月定期へ
- 家賃・地代→値下げ交渉(お願いしますと頭を下げて下さい)
- 納品書などの帳票類はメーカー購入のものを使い切ったら、その後はエクセルなどで作成
- 紙は安い古紙を使用
- 福利厚生費→社内行事・飲み会は原則会費制に
- 営業経費の無駄なもの→旅費・交際費・会議費など全体会議で周知徹底
- リース物件で不要なもの→メーカーと相談して交換・譲渡などトータルで安くなる方法を探る
- その他、ホームページ作成のリース、IPフォンのリースなどは話しに乗らないこと
設備含めた投資・事業資金の借入はしばらく凍結
もし親戚・知人の手前はいっている役員・監査役・相談役で費用対効果のない方の報酬は事情を話して止めさせていただく。
この不況下で受けて、資金繰りのない会社でもここまではやっています。
崖っぷちの会社はここからが本丸です。
すべての基本は
入ってくるお金以上の支出をしないということです!
地所を含めた有給資産を売価、空きスペースを賃貸。 (金額で欲をださなければ不動産屋がそれなりの買い手をつけてくれます)
手持ちの有価証券はすべて売却現金化します。
中途解約の6ヶ月条項の短縮・原状回復については、事情を説明して仲介またはオーナー直でできるだけ安くなる交渉をしてみてください。
やるだけのことをやって最後に手をつけるのが人件費および雇用調整です。
- 原則残業は禁止
- 通勤手当支給に上限設定
ここで社長は、「雇用を守り抜く」か「雇用調整やむなし」の判断をしてください。 前者に決めた場合、まずワークシェアリングです。仕事量に応じて勤務時間を縮小してください。また賃金カット率を全員一律としてください。 社長がいかに真剣に全員の前で事情を説明できるかにかかってますが、「雇用はなにがなんでも守る!」という気持ちが伝われば全体の意識も変わり会社再建も夢ではありません。
要は人なのです。「人は器なり」です。
後者を選んだ場合(無情なようですがこれが現実論かも知れません) 早期退職含め勧奨退職者を選定して個別ヒアリングにはいってください。 「なんで私なの?」となる場合もあります。斡旋調停、ユニオンに駆け込まれる覚悟も必要となります。予告解雇・整理解雇の要件等を事前に労働力に確認してください。 そして残った従業員に事情を説明して賃金の一律カットの説明をしてください。 当然、前者の場合よりもカット率は少なくてすみます。この際に営業部門は固定給を抑えインセンティブ給に移行する給与体系の変更をしましょう。 当然、取締役の役員報酬も大幅にカットしてこのことを従業員に伝えてください。 社長の報酬についてはすでに自宅や個人資産が証貸の担保に入っていることでしょうから、今後の状況を見据えた検討が必要です。
通常「後継者問題にからむ事業継承」やシナジー効果を狙った戦略的統合に使われる手法です。
「こんな財務状況で?」と思われるかもしれませんが、優良顧客があったり、販路・インフラが整備されていたり、オンリーワンの技術があったり、特許などの知財がある場合、「買いたい」という会社が現れるかもしれません。
勇気が必要ですが同業他社や関連法人に社長自らが水面下で接触してみてください。
条件は両者の話し合いによりますが、会社がなくなっても従業員が守れるかもしれません。社長の二次創業の可能性もでてきます。
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